東海村の原子力

東京大学大学院工学系研究科
原子力専攻(専門職大学院)

1.事業計画概要

東京大学は、平成17年度から工学系研究科内に原子力専攻(専門職大学院)(以下「本専攻」という。)と原子力国際専攻を設けて、社会人を含む専門職大学院教育と国際レベルの研究者養成を目的とした新たな研究教育ミッションの展開を行っています。2023年3月31日現在約270名の原子力専門職修士を社会に輩出し、継続的な原子力専門職の教育を推進しています。併せて、本専攻は、大型装置を用いこれまで行ってきた原子力開発並びに放射線の利用に関する研究等の大学における原子力工学の総合的研究並びに大学院学生等の研究・教育も行ってまいります。また、日本原子力研究開発機構における全国大学共同利用に関する窓口業務についても、本専攻で行います。

本専攻の組織は、4講座、8管理部門及び事務室で教職員約60名、大学院学生等約15名で構成され、以下の設備を利用し、本専攻の専門職学位課程の教育に資するとともに、従来行ってきた全国の国公私立大学や研究機関等の研究者による共同研究の利用にも供してまいります。

また、年5回程度開催される「弥生研究会」を始め、国際シンポジウムやワークショップ等の開催を引き続き図り、種々の分野の研究者による活発な情報交換や討論を行ってまいります。

 
(1)高速中性子源炉「弥生」

40年間にわたる原子炉「弥生」の運転は、平成23年3月11日をもって終了いたしました。

平成24年8月に,廃止措置計画書が認可され,現在は,廃止措置中の原子炉となっています。令和2年度には,原子炉等規制法の改正施行等に合わせて廃止措置計画と保安規定の変更申請を行ったほか,廃止措置における核燃料物質の切断後の蒸留を完了させ,また,米国エネルギー省への使用済み燃料の引渡しに向けた準備を行いました。令和3年度も引き続き,廃止措置を着実に進める予定です。

弥生廃炉後、燃料があったスペースに、小型 X バンド電子ライナック中性子源を設置して、中性子科学工学の研究と教育を推進する新中性子源計画を検討中です。

(2)ライナック設備

震災後の復旧作業を完了して、平成24年度当初より、運転及び全国共同利用を再開しました。

極短電子パルス発生・計測、高品質レーザー電子銃等の量子ビーム工学に関連した研究をはじめ、原子力分野・医学物理分野・産業分野における放射線効果の利用や制御に関する各種の実験研究を継続推進いたします。

(3)ブランケット設備

原子炉工学、核融合炉工学、放射線利用に必要な材料科学、加速器工学、熱流動工学等に関する研究を継続します。社会・産業インフラ診断のための X バンド小型加速器の応用研究を継続します。また、X バンド電子ライナックを活用した小型中性子源の開発および中性子計測系の開発を実施します。過酷環境下における材料の劣化試験および各種分析試験を重照射研究設備と連携して進めます。過酷事故シミュレーション技術の高度化に向け、温度成層化現象に関する熱流動試験を継続します。土壌中における放射性核種の環境への動態評価を実施します。
また,トリチウム実験室の整備を継続します。

(4)重照射研究設備

タンデトロン加速器の全国共同利用を継続します。原子炉構造材料、原子燃料被覆管、核融合炉構造材料の開発に向け、重要な劣化現象である照射影響を模擬します。イオン照射を利用した機能材料開発等を継続します。世界でも有数の、透過電子顕微鏡を用いた高エネルギーイオン照射その場観察システムを用いた研究を推進します。

(5)国際原子力教育事業

原子力専門職大学院教科書・教材を英語化し、出版を進めるとともに IAEA と連携した E-LEARNING システムの高度化を進めます。ゆくゆくは IAEA のホームページで公開され、世界の主要大学で活用される見込みです。

Japan-IAEA 合同原子力エネルギーマネージメントスクールを、平成24年度から継続的に開催してきております。第11回目となる令和5年度は、原子力人材育成ネットワーク会議、日本原子力研究開発機構、日本原子力産業協会、原子力国際協力センター、日本原子力学会との共催により、対面で実施する予定です。

また原子力専攻の教育カリキュラムは、本郷の原子力国際専攻と一緒に、IAEA INMA(International Nuclear Management Academy)による Peer Review を平成29年10月11-14日に受けました。平成31年3月に認定が得られ、同年4月から原子力専攻はNuclear Professional Management Program、原子力国際専攻はNuclear Technology Management Program が開講されました。これで両専攻の教育が、IAEA 認定の世界標準の一つになり、国際的プレゼンスが向上します。また IAEA INMA は4年に一度の更新が必要なため、今年の9月までに更新手続きを経て IAEA の承諾を得る予定です。

2.安全協定第5条に係る新増設計画

予定ありません。