核燃料サイクル工学研究所は、原子力エネルギーを有効利用する核燃料サイクルの実現に向けて、以下の研究開発に取り組んでいます。
国が定めた「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」の計画に基づき、燃料デブリの特性把握に係る研究開発、汚染水処理で発生する放射性廃棄物の処理・処分技術開発等、当研究所の各施設を活用した試験研究に取り組んでいます。
また、福島第一原発周辺の環境試料のクロスチェック分析、放射線や放射能に関する勉強会の開催等の支援活動を実施しています。
東海再処理施設は廃止措置段階に移行し、当面、保有する放射性廃棄物に伴うリスクの早期低減を最優先課題として、高放射性廃液のガラス固化処理にかかる取り組みを進めるとともに、高放射性廃液のガラス固化技術の高度化や低放射性廃棄物の減容・安定化技術開発を進めています。
さらに、日本原燃㈱が青森県に建設中の六ヶ所再処理工場への技術協力を実施しています。
プルトニウム燃料開発施設では高速炉用MOX燃料に係る技術開発として更なる経済性向上を目指した製造プロセスの開発や燃料の研究及び分析や保障措置等の関連技術の開発等を行っています。
また、日本原燃㈱が青森県に建設中の MOX 燃料工場への技術協力を実施しています。
低レベル放射性廃棄物の処理については、放射性廃液のセメント固化技術、固体廃棄物の減容安定化技術、焼却灰等に対するセメント材や新規固化材による固化技術等の開発を行っています。
使用済燃料の再処理により発生する高レベル放射性廃液は、ガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)に処理し、一定期間、地上の施設で貯蔵した後、地下300m以深の地層中に金属容器や粘土材料に包んで埋設し、人間の生活環境から隔離すること(地層処分)が計画されています。この地層処分の安全性と信頼性の向上に資するため、地層中での地下水の性質や動き、金属容器や粘土材料の性能、放射性物質の動き等を調べる研究を行っています。
使用済燃料の再処理によって生じる高レベル放射性廃液の中には、発熱量が大きく、万が一、人が摂取した場合の有害度が高いアメリシウムやキュリウムなどのマイナーアクチニド(MA)が含まれます。このMAを高レベル放射性廃液から取り除き、ガラス固化体の発熱量の低下を図るとともに、高速炉内の中性子によって半減期の短い核種に核変換することにより、潜在的な有害度の低減を図ることが期待されます。この実現のため、高レベル放射性廃液からMAを分離して取り出す技術、MAを添加したウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の物性研究や製造技術、さらに高速炉内でMA燃料を照射する際の安全性等の解析・評価技術に係る研究開発に取り組んでいます。
核燃料サイクル工学研究所は、地震等の自然災害発生時や事故・トラブル等の緊急時に的確な対応を図るための資機材や体制を整備するとともに、訓練等を通じ緊急事態への対応能力の向上に努めています。
再処理施設においては、高放射性廃液のガラス固化処理にかかる取り組みを進めるとともに、新規制基準を踏まえた安全性向上に係る取り組みを進めています。
プルトニウム燃料技術開発施設においては、核燃料サイクル工学研究所内のMOX集約にかかる取組を進めるとともに、新規制基準を踏まえた安全性向上に係る取り組みを進めています。
また、核燃料物質使用施設において、新規制基準への対応の検討を進めています。
放射線測定器や防護服等のほか、自治体(茨城県、東海村)や所轄消防本部との通報用専用回線、救助用資機材等、災害発生時に必要な資機材を配備しています。また、消火栓が使えない場合に備え消火用水を敷地内各所に確保しています。
職員と構内に常駐する警備員で構成する自衛消防班が24時間体制で緊急時に備えています。
施設の火災や大規模地震の発生を想定した研究所全体の総合訓練を毎年実施するほか、所轄消防本部等の防災関係機関との合同訓練を実施し、災害発生時の対応能力向上を図っています。
所轄消防本部と自衛消防班との合同訓練
核物質防護設備を適切に運用するとともに、治安当局と連携した核物質防護訓練を実施し、実践的な核物質防護体制を
構築しています。