学芸員だより(第20号)植物分布情報にメッシュコードを利用する

更新日:2026年08月11日

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植物分布情報にメッシュコードを利用する

2026年8月11日

1. 地域メッシュコードとは

地域メッシュは、各種統計に利用するために、緯度・経度に基づいて地域をほぼ同じ大きさのメッシュに分けたもので、通常は地域メッシュコードと呼んでいます。

日本では、行政管理庁(現在の総務省)によって出された「統計に用いる標準地域メッシュおよび標準地域メッシュコード」(昭和48年7月12日行政管理庁告示第143号) に基づいています。

このコードは日本全国を緯度・経度に基づいて格子状に分割し、各区画に一蓮の番号を振ったものです。

メッシュの大きさは以下のように分割の細かさに応じて階層になっています。さらに細分したメッシュもありますが、多くはこの3種類が使用されています。

メッシュの分類表

3次メッシュは基準地域メッシュあるいは1kmメッシュとも呼ばれています。緯度は30秒、経度は45秒の間隔で、一辺の長さが約1kmです。25000分の1地形図を縦と横に10等分しているのでメッシュの数は100個になります。

 

2. メッシュコードの利用

3次メッシュは、国勢調査の地域メッシュ統計、総合計画の策定、防災計画の策定、出店計画の策定、地理情報システム(GIS)を用いた各種分析など多くの分野で利用されています。碁盤の目のようなブロックに色がついた図をよく見かけますが、基本的にはこのメッシュコードが利用されています。

環境省の自然環境保全基礎調査では、動植物分布調査の全種調査や環境指標種調査の原データとして、3次メッシュが用いられています。

茨城県の鳥獣保護区等位置図(ハンターマップ)は鳥獣保護区、特定猟具使用禁止区域及び指定猟法禁止区域等のおおよその位置と区域を図示したものです。この地図にもメッシュが利用されています。マップデータはPDFファイルでダウンロード(県民生活環境部環境政策課)できます。

 

3. 3次メッシュを植物分布の情報に利用する

植物調査では、調査場所の住所を記録することは必須ですが、地名がわからない場合でもこのメッシュコードを記録しておけば後で調べることができます。また、各種植物の分布図作成やデータ整理にもメッシュコードが役立ちます。

金井弘夫氏による以下の報告では、3次メッシュの課題、GPSの利用、日本測地系と世界測地系の関係、標本ラベルへの記入などの話題について解説しています。

(1972)日本植物の分布型の研究(3) 産地の表示法について. 植物研究雑誌:47

(1987)メッシュの問題. 植物分類・地理:38

(1995)標本ラベル論議へのながーいコメント. 日本植物分類学会Newsletter:80

(2011)メッシュの問題(その2)産地の記録法と世界測地系導入の影響. 植物研究雑誌:86


県単位では1990年に千葉県が「千葉県メッシュマップ」(千葉県立中央博物館発行)を発行しています。メッシュの区分は3次メッシュと同じですが、コードは県独自の番号となっています(図1、図2)。

 

図1,2千葉県メッシュマップ

(図1、図2)千葉県メッシュマップ

 

その後1997年に発行された「都道府県別メッシュマップ全53巻」(環境庁自然保護局計画課自然環境調査室発行)は全国レベルで植物標本ラベルにメッシュコードを記録するきっかけとなりました。このメッシュマップの茨城県版(図3)は県内でのフロラ調査や各種植物調査では必携の地図で、今でも多くの関係者が利用しています。

図3メッシュマップ茨城県版

(図3)都道府県別メッシュマップ 08茨城県

 

4. 東海村の総合調査例から

これまで東海村で実施した調査から3次メッシュを記録する方法を紹介します。

 

方法1 「都道府県別メッシュマップ08 茨城県」を利用

現地でこのメッシュマップを見ながら3次メッシュを読み取ります。ただし、市街地では現在地がわかりやすいが山地部では位置が不正確になることがあります。

図4県別マップ08 茨城県

(図4)「県別マップ08 茨城県」31ページの部分

 

図4はメッシュマップの東海村が該当する1/50000地形図です。左上の5440-54は2次メッシュを示しています。3次メッシュは5440-54に各メッシュの2桁をつけ加えて表します。例えば歴史と未来の交流館の位置は544054-45(54405445)の8桁となります。

 

方法2 ハンディGPSと地図ソフト「カシミール3D」の組み合わせ

「カシミール3D」は地形図の閲覧や印刷、地形断面図の作成、GPS機器とのデータ交換やGPSデータ編集・分析など多彩な機能を使用できるフリーソフトです。

まずハンデイGPSで各調査ポイントを記録します。次にこのポイントデータをPCの「カシミール3D」に読み込みます。

図5東海村調査ポイントとメッシュ枠の表示

(図5)東海村調査ポイントとメッシュ枠の表示

 

図5は「カシミール3D」で3次メッシュに該当するメッシュ枠を表示して、ハンディGPSからの各調査ポイントのデータを重ね合わせたものです。この方法によれば調査地の正確なメッシュコードが記録できます。

 

方法3 スマホアプリ「野外調査地図」を利用

「野外調査地図」は、緯度・経度、トラックログ、ポイント記録、国土地理院標高値の取得、空中写真の表示、国土地理院の地形図表示、3次メッシュとその範囲(1次メッシュ、2次メッシュ、5倍地域メッシュも表示できます)の表示、標高断面のデータ取得、断面図表示などができるアプリです。

 

図6野外調査地図

(図6)「野外調査地図」の表示

図6は東海村の石神城址公園駐車場での記録例です。

緯度(36:29:2.06)・経度(140:34:39.48)、住所(319-1102茨城県那珂郡東海村石神内宿1340)、標高(5.59m)、3次メッシュコード(54405476)が正確に表示されています。住所の番地表示は多少のずれが生じる場合もあります。

特に3次メッシュの表示機能とオフラインでも使用可能であることは野外調査時の必須のツールとして役立っています。ただし、Android用のアプリです。

 

 

5. 課題

野外調査や植物標本ラベルの記載事項においては、植物名、調査期日、調査場所、調査者、同行者などの項目は必須です。過去のメッシュのない記録にコードを付け加えることは困難です。

メッシュコードの記録は測定機器の発達とともに一層の正確さを求められることになりそうですが、過去とこれからの記録の調整が求められています。

(博物館長  安嶋 隆)

 

「学芸員だより」について

歴史と未来の交流館には、学芸員が常駐しており、調査や研究を日々行っています。

そんな学芸員から、知ったら誰かに話したくなる東海村に関する情報について、コラム形式で掲載しています!

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