学芸員だより(第9号)東海村最古の地層を歩く
東海村最古の地層を歩く
2025年9月10日
学芸員だよりをご覧の皆さま、こんにちは!
歴史と未来の交流館で自然分野の学芸員をしております、「シェリー」こと伊理と申します。
普段は村内の自然についていろんなことを調べていますが、もともとの専門は「化石」です。今日は、歴史と未来の交流館で開催中の企画展「東海村発足70周年特別企画展 時間旅行へようこそ!」に関連して、東海村で最古の地層とそこから見つかる化石についてお伝えします。
東海村は2025年3月31日で発足70周年を迎えました。しかし、東海村を構成する台地はそれよりもずっと古い時代から堆積しており、その中でも最も古いのは、「新川層」という1100万年前の時代の地層です。
東海村最古の地層「新川層」の露頭
この「新川層」は、常陸太田市に分布する長谷層や那珂市周辺に分布する瓜連層などに相当する地層です。もともとは常陸太田市付近に分布する源氏川層の延長部分と考えられていましたが、「源氏川層が約1500万年前の堆積物であるのに対し、東海村に分布する堆積物は約1100万年前~約1000万年前の堆積物であるため、堆積年代が異なる」という理由から、東海村教育委員会『東海村の自然誌』(2007)で「新川層」という新しい名前を与えて解釈しています。
現在開催中の企画展「東海村発足70周年特別企画展 時間旅行へようこそ!」では、この1100万年前の新川層についてピックアップしています。この春、今回の展示制作のために現地を調査してきました。
新川層は、須和間霊園の下にある崖のあたりで観察することができます。一部分は農道沿いからも見られるのですが、普段は大部分が草に覆われています。
草の生い茂る中をかき分けていくと、新川層の中でも貝の化石が密集して見つかる地層があります。ハンマーをふるってみると、リュウグウハゴロモガイのなかまが見つかります。

貝化石が見つかる地層
リュウグウハゴロモガイのなかま
近くの他の地層からは、生痕化石と言って、当時泥の中を動き回った生きものがつけた痕の化石が出てきます。写真の泥岩に含まれる白い点々は、ゴカイのような生きものが動いた痕です。
ゴカイのような生きものの這い跡の化石
また、肉眼で見える化石のほかにも、顕微鏡を使わないと観察が難しい化石も出てきます。顕微鏡を使ってよーく探すと、カイメンの骨針、珪藻という植物プランクトン、そして魚のうろこまで出てきます!
魚のうろこの化石。詳細な種類は今後調査予定である。
「東海村発足70周年特別企画展 時間旅行へようこそ!」は、令和8年2月23日(月・祝)まで開催しています。この記事に掲載した化石の実物もご覧いただけますよ。興味がわいてきたら、ぜひ遊びにいらしてくださいね。
参考文献
- 東海村教育委員会 (1994) 『東海村の自然』p.13-16.
- 東海村教育委員会(2007)『東海村の自然誌』p.38-43.
「学芸員だより」について
歴史と未来の交流館には、学芸員が常駐しており、調査や研究を日々行っています。
そんな学芸員から、知ったら誰かに話したくなる東海村に関する情報について、コラム形式で掲載しています!
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更新日:2025年09月10日