学芸員だより(第4号)「虫こぶ」はいつからある?

更新日:2025年04月10日

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「虫こぶ」はいつからある?

2025年4月10日

学芸員だよりをご覧の皆さま、初めまして!歴史と未来の交流館で自然分野の学芸員をしております、「シェリー」こと伊理と申します。

普段は村内の自然についていろんなことを調べていますが、もともとの専門は「化石」や「生命の進化の歴史」です。今日は、歴史と未来の交流館で開催中の企画展「虫こぶ ~奇妙で不思議な秘密の隠れ家~」に関連して、虫こぶがどのくらい昔からあるのかをお伝えしたいと思います。

そもそも、「虫こぶ」とはいったい何?という方のために、簡単に解説しますね。

虫こぶ(虫瘤、虫えい、ゴールともいいます)というのは、昆虫や菌類が植物に作る、でこぼことした構造のことで、この中で昆虫の赤ちゃんが育っています。虫こぶの中には、赤ちゃんが育つためのご飯が豊富にありますし、外からは赤ちゃんが見えないので、天敵に襲われる心配をせず、すくすくと大きくなることができます。  

村内で見られるバラハタマフシの虫こぶ

村内で見られるバラハタマフシの虫こぶ

村内で見られるノブドウミフクレフシの虫こぶ

村内で見られるノブドウミフクレフシの虫こぶ

バラハタマフシの中のようす

バラハタマフシの中のようす

ノブドウミフクレフシの中のようす

ノブドウミフクレフシの中のようす

 

 さて、それでは本題に入りましょう。「虫こぶ」というのは、いったいいつからあるのでしょうか?

 海外では、化石として虫こぶが見つかっており、それらの記録のうち現時点で最も古いのは約3億8千万年前~3億9千万年前ごろのものです (Labandeira、 2021)。地球の歴史で言うと、デボン紀と呼ばれる時代にあたります。このころには、陸上では植物が陸上で森林をつくり、たくさんの種類の植物が生まれていました。昆虫の祖先である節足動物もすでに陸上に進出しています。ちなみに、現時点で最も古い虫こぶは、コケやシダのように胞子で繁殖する植物に作られたものだそうです。

 その後、植物や昆虫の進化に伴ってたくさんの種類の虫こぶができていきますが、地球規模の大量絶滅で一部の昆虫や植物が絶滅してしまうという目にも遭いつつ、そのたびにまた大量絶滅後の世界で生き残った者たちが虫こぶの種類を増やし・・・というように、虫こぶや虫こぶを作る虫、作られる植物たちは、進化と絶滅を繰り返しながら今の時代までその営みを脈々とつなげています。

 そう考えると、3億年以上も「虫こぶ」という生存戦略が残り続けて、今では身近なところでたくさんの虫こぶが見られるって、すごいことだと思いませんか?

「虫こぶ ~奇妙で不思議な秘密の隠れ家~」は、令和7年5月5日(月・祝)まで開催しています。興味がわいてきたら、ぜひ村内の虫こぶたちに会いに来てくださいね。

 

虫こぶ展チラシ

 

参考文献

  • Labandeira (2021) “Ecology and Evolution of Gall-Inducing Arthropods: The Pattern From the Terrestrial Fossil Record”, Frontiers in Ecology and Evolution, Volume 9-2021.

 

「学芸員だより」について

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そんな学芸員から、知ったら誰かに話したくなる東海村に関する情報について、コラム形式で掲載しています!

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