学芸員だより(第1号)東海村とヘビ

更新日:2025年01月12日

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東海村とヘビ

2025年1月12日

2025年の幕開けとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

今年は巳年です。「ヘビ」と聞くと、どんな印象を持ちますか?

東海村ではヘビのことを「長虫(ながむし)」や「へんめ」、マムシのことは「クチハビ」と呼びます。

話はずれますが、この「〇〇め」というのがこの地域の方言の特徴で、東海村では対象に「め」や「こ」をつけて呼ぶことが多いです。例えば、「蚊」のことを「かんめ」、「イヌ」のことを「いぬめ」、「貝」のことを「かいこ」などと呼びます。

権現山古墳

権現山古墳

さて、話をヘビに戻しますが、村内にはヘビにまつわる伝説がたくさんあります。 例えば、村内最大の前方後円墳である権現山古墳を所有していた家には「権現山の主は白ヘビで、毎日ウマに乗せて海へ遊びに連れて行った」という伝承があります。この家では、毎年4月に大神宮境内で馬のくつわを飾り白ヘビを祀る「ザル神祭り」を行っているそうです。その他に、『東海村史 民俗編』や『東海村のむかし話と伝説』には、氏神様の近くに住むヘビの話や家に異変があると出てくるヘビの話などが収録されており、「白ヘビは神の使い」「ヘビは家の守護神」と認識している家が複数あることが分かります。その一方で、「ヘビを殺すと三代たたられる」という話や「ヘビを指さすと指が腐る」などの伝承やヘビを避けるための方策にまつわる話も収録されています。

ヘビは、古来より人との関わりが深い存在でした。例えば、縄文土器の中にはヘビが表現されているものがあり、東海村の御所内貝塚からも、ヘビの姿をした縄文土器の把手(とって)が出土しています。脱皮を繰り返すヘビの姿と人を死に追いやる毒をもつヘビの姿から、ヘビは生命にかかわる力をもつと考えられてきたと言われています。

皆さんもヘビを神だと言われても違和感なく受け入れる気持ちと、その一方で「怖い」という感情を持つ方も多いのではないでしょうか。

ヘビに対して神として崇拝する気持ちと、その一方では忌み嫌う気持ちという二面性があり、その両者は現在も私たちの中に脈々と受け継がれているように思います。 ヘビと人間は古くからの長い付き合いがあるため、日本語の中にはヘビにまつわる用語やことわざなどがたくさんあります。

今年は巳年ですから、ぜひ、ヘビに注目してみてはいかがでしょうか。

(林 恵子)

参考

  • 東海村の自然調査会編『東海村の自然』1994 東海村教育委員会
  • 東海村史編さん委員会編『東海村の民俗』1992 東海村
  • 東海村教育委員会『東海村のむかし話と伝説(付・わらべ唄)』1981東海村教育委員会  

 

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