第2期 宇宙線ミュオンで古墳を透視プロジェクト

更新日:2024年10月03日

第2期ミュオンで古墳を透視プロジェクト

本プロジェクトは、子どもたちと共に宇宙線の力で古墳の中を透視するため、令和5年4月からスタートしました。

第2期の目的は、令和5年度に完成した「歴史と未来の測定器」で古墳の内部透視を開始することと、新たにもう1台の測定器を製作することです。

今後、「ミュオンにコーフンクラブ」に所属する24名の子どもたちは、物理学と考古学の専門家の指導の下、令和6年6月から令和7年3月まで、月1回のペースで活動を行います。

なお、参加者を随時募集しておりますので、ご興味のある方は下記よりご確認いただき、ぜひお申込みください。

【随時募集】第2期 宇宙線ミュオンで古墳を透視プロジェクト!参加者大募集!!

 

活動の様子

第4回「石室の位置と、測定器の設置場所を考えよう!」(令和6年9月22日)

今回の活動では、参加した小中高生19名が5班に分かれて、今後の古墳透視に関わるグループワークを行いました。

本活動でのテーマは二つあり、一つ目が「舟塚古墳群2号墳のどこに王が眠る石室があるのか?」について、二つ目が「宇宙線ミュオンで石室を見つけるためには、どこに測定器を置けば良いのか?」について話し合いました。

児童生徒はグループワークの前に、田中裕氏(茨城大学人文社会科学部)から舟塚古墳群2号墳について分かっていることや埋葬施設の種類や作られた場所について、藤井芳昭氏(J-PARCセンター・ニュートリノセクション)から古墳透視の方法や測定器設置に有効な場所の条件について解説を受けました。

ミュオン活動
ミュオン活動

先生方のお話で、重要なポイントとなったことは、現在分かっている情報を整理した上で、あらゆる可能性を考えた仮説を立てるということです。

その後、児童生徒は、田中氏と藤井氏から得た情報や視点を基に、上述した二つのテーマについて古墳の測量図を使いながら話し合い、グループごとに意見をまとめて発表しました。 その結果、石室の推定地と測定器設置場所の候補地を記した図面が完成しました。続いて児童生徒は、自ら考えた仮説を検証するため、作成した図を持って舟塚古墳群2号墳に向かいました。

現地では、田中氏と藤井氏の解説を受けながら、実際に古墳の状況や設置場所の候補地を一つひとつ確認しました。児童生徒は、現地には測量図や航空写真からは読み取れない情報や、測定器の設置を妨げる障害があることを知り、現地踏査の大切さを実感したようです。

ミュオン活動
ミュオン活動

次回の活動では、ついに令和5年度に製作した「歴史と未来の測定器」を設置し、舟塚古墳群2号墳の内部透視を開始する予定です。

最終的な測定器設置場所については、現地踏査を経て絞り込んだ児童生徒の設置案に、専門家の知見を加えて決定します。今後も本プロジェクトの動向に注目いただければと思います。

 

第3回「宇宙・加速器の講座、簡易測定器組立体験」(令和6年8月31日)

ミュオン活動1

今回の活動には、ミュオンにコーフンクラブに所属する小中高生18名が参加しました。

当日は、前半に「宇宙・加速器の講座」を、後半に「簡易測定器組立体験」を行いました。

前半は、小林愛音氏(J-PARCセンター・加速器第五セクション)を講師にお迎えし、「加速器で宇宙ふしぎ発見!」というタイトルでお話をいただきました。

小林氏は普段、J-PARCにおいて加速器の開発や改良を進められ、円形加速器の大強度化に向けたビームの運動力学に関する研究をされています。

ミュオン活動2

当日は「宇宙の謎」に迫るために行われている加速器や素粒子を使った研究について、児童生徒にも分かりやすく解説いただきました。

講座後には「小林先生の宇宙の話に興味が湧きました。家に帰ったら宇宙についてもう少し調べてみようと思います。」などの声があり、本講座が児童生徒の興味関心を高めることに繋がったと感じています。

ミュオン活動3

後半は昨年度に引き続き、年度後半に予定する測定器作りの練習を兼ねた「簡易測定器組立体験」を行いました。

活動の指導は、本プロジェクトを指揮する藤井芳昭氏(J-PARCセンター・ニュートリノセクション)を中心とした専門家チームが行い、実際の古墳透視に使用するミュオン測定器の簡易的なものを製作しました。

ミュオン活動4

本体験は宇宙線を光の信号として捉え、それを電子信号に変換する「シンチレーション検出器」を組み立てた後、完成した検出器をオシロスコープ(電子信号を視覚的に表示する機器)に繋ぐことで、目には見えない宇宙線の信号を見ようというものです。

活動の結果、参加者全員が歴史と未来の交流館に降り注ぐ宇宙線の信号を見事捉えることに成功しました。

参加者からは、「去年は失敗してしまった簡易測定器での測定で悔しい思いをしたので、今年こそは成功させると思いながら活動を始め、最後にしっかりミュオンを観測できたのでとても嬉しかったです。」や、「後半の測定器作りではオシロをのぞき、動かず、ノイズしか出なくて絶望したが、その後見ることができて嬉しかった。研究者のように失敗してもめげない気持ちが味わえて良い経験になった。」などの声があり、昨年度から継続して参加する児童生徒の成長を感じると共に、今回の活動が2台目の測定器作りを成功に導くための重要な活動になったと実感しています。

 

第2回「城里町徳化原(とっけはら)古墳の見学会」(令和6年7月7日)

古墳見学会1

今回の活動では、ミュオンにコーフンクラブに所属する22名の小中高生を中心に、保護者・スタッフを含めて総勢50名が東茨城郡城里町に位置する徳化原古墳を訪れました。

当古墳は現在、茨城県埋蔵文化財センター「いせきぴあ茨城」の敷地内に所在しています。

7世紀後半(約1400年前)に造られた方墳(長方墳)である徳化原古墳は、県内でも有数の横穴式石室を直に見学することができる古墳として知られています。

古墳見学会2

ミュオンにコーフンクラブでは今秋、令和5年度に完成した「歴史と未来の測定器」により東海村舟塚古墳群2号墳のミュオン透視を開始します。

今回の古墳見学は、そのミュオン透視に先立って、探索対象である埋葬施設(石室)の位置や大きさなど、その具体的なイメージを掴むことを目的に実施しました。

現地に到着した参加者は、まず徳化原古墳を発掘調査された田中裕氏(茨城大学人文社会科学部教授)から、古墳時代の概要と徳化原古墳に関する講義を受けました。とくに、ミュオンで探索する石室のお話では、古墳のどこに、どのような種類の石室が造られたのかということを学びました。

古墳見学会3

講義後は徳化原古墳に移動し、墳丘の南側に開口した横穴式石室を見学しました。現地では、子どもたちが田中氏の解説を聞きながら、石室の内部を熱心に観察する様子が見受けられました。

そして最後に、ミュオンで探索する舟塚古墳群2号墳の石室の位置を予想し、見学会は無事終了となりました。

今回、専門家の解説の下、実際に古墳の石室を見学することができたのは、子どもたちにとって貴重な経験になったと実感しています。

なお、ミュオンにコーフンクラブでは、現在メンバーの追加募集を行っています。

詳細は、(こちら)【追加募集】第2期 宇宙線ミュオンで古墳を透視プロジェクト!をご覧ください。

是非、私たちと一緒に古代ロマンを追い求めましょう!

最後になりましたが、徳化原古墳の見学会を実施するにあたり、いせきぴあ茨城の職員の皆様に大変お世話になりました。記して感謝申し上げます。

 

第1回「ミュオン講座と霧箱づくり体験」(令和6年6月23日)

ミュオン講座の様子

当日は、全メンバーのうち18名の小中高生が参加しました。

子どもたちは開講式の後、下村浩一郎氏(J-PARC物質・生命科学ディビジョン)から、ミュオンとは何なのか、また近年のミュオンを利用した文化財調査の成果について学び、本プロジェクトの重要キーワードである「ミュオン」の知識を深めました。

霧箱づくり体験の様子1

そして後半は、藤井芳昭氏(J-PARC素粒子原子核ディビジョン)の指導の下、霧箱づくりに挑戦し、飛行機雲のように見えるアルファ線の軌跡を観察しました。

また、霧箱づくりでは、飯沼裕美氏(茨城大学理工学研究科(理学野))の研究室に所属する学生さんたちがスタッフとして活躍してくれました。

霧箱づくり体験の様子2

果たして、ミュオンにコーフンクラブは今年、東海村の巨大古墳「舟塚古墳群2号墳」の謎の解明に近づくことができるのでしょうか。

今後の活動に期待が高まります。

次回(令和6年7月7日)は、茨城県東茨城郡城里町に所在する徳化原(とっけはら)古墳を見学し、ミュオン透視する古墳内部(石室)のことを学ぶ予定です。

このページに関するお問い合わせ先

教育委員会 生涯学習課 博物館・文化財担当

〒319-1112 茨城県那珂郡東海村村松768番地38(歴史と未来の交流館)
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