(環境放射線監視季報第155報から)

東海村の環境放射線監視結果の概要

Ⅰ監視結果の評価

茨城県環境放射線監視計画に基づく、東海村の平成22年度第4四半期の短期的変動調査結果及び第3,4四半期の長期的変動調査結果は、次のとおりです。

1.短期的変動調査(平成23年1月~平成23年3月)

東京電力㈱福島第一発電所事故の放射性物質放出の影響により、空間ガンマ線量率が平常の変動幅を大きく上回りました。 また、同様に、大気塵埃及び降下塵から137Csなどの放射性核種が検出されました。さらに、原子力施設の排気、排水からも、福島第一原子力発電所の放射性物質放出の影響による放射性核種が検出されました。

なお、これらについては、県内原子力施設からの影響ではありません。

2.長期的変動調査結果(平成22年10月~平成23年3月)

東京電力㈱福島第一発電所事故の放射性物質放出の影響により、積算線量の測定結果が平常の変動幅を上回りました。

Ⅱ監視結果の概要

1.短期的変動調査結果
(1)空間ガンマ線量率測定結果

県が東海村に設置している7地点のモニタリングステーションで測定した空間ガンマ線量率1時間値の3ヶ月間の平均値及び最大値を次の図に示します。県内76地点での月平均値は、28nGy/時~1000nGy/時の間にあり、東京電力㈱福島第一発電所事故の放射性物質放出の影響により、平常時の変動幅(上限値は、100nGy/時)を大きく上回まわりました。

東海村での1時間値の最大値は,原子力機構原科研が3月15日に周辺監視区域境界(MP-9)で測定した5200nGy/時でした。

空間ガンマ線量率

(2)原子力施設の排気中の放射能測定結果

排気中に含まれる放射性物質については、原子力事業者が放射性核種分析、全ベータ放射能測定、全アルファ放射能測定を行っています。福島第一原子力発電所事故の放射性物質放出の影響による放射性核種及び全ベータ核種が検出されました。全アルファ放射能については不検出でした。

放射性核種分析は、県内原子力施設の測定対象の42排気筒のうち、今期に放出のなかった3排気筒を除いた原子力機構原科研JRR-3、原子力機構サイクル工研の主排気筒など39排気筒において、希ガス(41Ar,85Krなど)、トリチウム(3H)など各施設の放出核種を測定したところ、東海村内では、下表に示す14排気筒で放射性核種が検出されました。

そのうち、福島第一原子力発電所事故の放射性物質放出の影響により放射性核種が検出されたのは9排気筒でした。

なお、NDC照射後試験棟のヨウ素-131の3ヶ月平均濃度について管理目標値を上回りました。

原子力施設の排気中の放射能測定結果

排気中の主要放射性核種の管理目標値に対する割合

この四半期における短期的変動調査としては、上記の他に大気中放射能濃度測定の結果、福島第一原子力発電所事故の放射性物質放出の影響によりニオブ-95、セシウム-137が検出されました。1月に採取した農畜産物中の放射能測定、海洋における放射能測定などは不検出でした。

2.長期的変動調査結果

東海村周辺地域内(東海村、日立市、ひたちなか市、那珂市など)の67箇所に配置されているTLD・蛍光ガラス線量計によって測定された平成22年10月から平成23年3月までの積算線量の分布を下図に示します。福島第一原子力発電所事故の放射性物資放出の影響を除外した積算線量の測定結果は、地域分布は従来と同じ傾向で、経年変化も従来と同じ水準で推移しております。なお、福島第一原子力発電所に事故の放射性物質の影響を含んだ積算線量による外部被ばく実効線量は東海地区で0.35~0.40μSvでした。

この期に行われた長期的変動調査としては、上記の積算線量の他に魚網表面吸収線量率,大気中,陸土中、陸水中及び海洋における放射能測定などを行ないました。福島第一原子力発電所事故の影響を除外した測定の結果は陸土については、水戸市見川など8地点の土壌試料について全地点でセシウム-137を検出しました。また、海洋については、久慈沖など12海域で海底土を採取、分析した結果、セシウム-137が5海域で、プルトニウムは9海域で検出されました。

福島第一原子力発電所事故の放射性物質放出の影響で、3月11日以降に水戸市愛宕町などの大気中の降下塵からニオブ-99、セシウム-137が検出され、平常の変動幅を上回りました。

積算線量(TLD・蛍光ガラス線量計)分布図