(環境放射線監視季報第151報から)

東海村の環境放射線監視結果の概要

Ⅰ監視結果の評価

茨城県環境放射線監視計画に基づく、東海村の平成21年度第4四半期の短期的変動調査結果及び第3,4四半期の長期的変動調査結果は、次のとおりです。

1.短期的変動調査(平成22年1月~平成22年3月)

 全般を通じて、原子力施設周辺環境の放射線及び放射能レベルには、異常は認められませんでした。また、原子力施設からの排気、排水中の放射能濃度は、排出基準等を全て下回っていました。

2.長期的変動調査結果(平成21年10月~平成22年3月)

放射能の分布は、従来と特に変わった傾向は認められませんでした。放射能の蓄積の傾向は、認められませんでした。

Ⅱ監視結果の概要

1.短期的変動調査結果

(1)空間ガンマ線量率測定結果

県が東海村に設置している7地点のモニタリングステーションで測定した空間ガンマ線量率1時間値の3ヶ月間の平均値及び最大値を次の図に示します。県内76地点での月平均値は、29nGy/時~54nGy/時の範囲です。

東海村での1時間値の最大値は、原科研が3月に亀下局で測定した76nGy/時ですが、降雨による影響でした。

平常時の変動幅の上限値は、100nGy/時です。

空間ガンマ線量率

(2)原子力施設の排気中の放射能測定結果

排気中に含まれる放射性物質の測定は、原子力事業者が放射性核種分析、全ベータ放射能測定、全アルファ放射能測定によって行っています。県内原子力施設のうち原子力機構原科研JRR-3など39排気筒において希ガス(41Ar,85Krなど)、トリチウム(3H)など、各施設の放出核種を測定しました。それらのうち東海村内では、下表に示す9の排気筒で放射性核種が検出されましたが、過去と同レベル又はそれ以下でした。次に示した図は、施設ごとの管理目標値に対する3ヶ月平均濃度の割合を表したものです。また、全ベータ放射能および全アルファ放射能については検出されませんでした。

この四半期における短期的変動調査としては、上記の他に大気中放射能測定、農畜産物中の放射能測定、海洋における放射能測定などを行いましたが、測定値は、いずれも法令値あるいは監視委員会が定める目安基準などを下回っていました。

排気中の放射性核種分析結果(主要核種)

排気中の主要放射性核種の管理目標値に対する割合

2.長期的変動調査結果

東海村周辺地域内(東海村、日立市、ひたちなか市、那珂市など)の67箇所に配置されているTLD・蛍光ガラス線量計によって測定された平成21年10月から平成22年3月までの積算線量の分布を下図に示します。

積算線量の測定結果は、地域分布は従来と同じ傾向で、経年変化も従来と同じ水準で推移しております。原子力機構サイクル工研の東海村外宿公民館で平常の変動幅の上限を超える値が検出されましたが,これは平成21年4月の公民館駐車場のアスファルト舗装に砕石を敷設したことによる自然放射線の増加による影響でした。その他は,いずれも平常の変動幅の上限値以下でした。

この期に行われた長期的変動調査としては、上記の積算線量の他に魚網表面吸収線量率,大気中,陸土中、陸水中及び海洋における放射能測定などを行ないました。 陸土については、水戸市見川など8地点の土壌試料を採取、分析した結果、7地点でセシウム-137を検出しました。また、海洋については、久慈沖など12海域で海底土を採取、分析した結果、セシウム-137が3海域で、プルトニウムは9海域で検出しましたが、いずれも過去のレベルと同程度で、蓄積の傾向は認められませんでした。土壌及び海底土以外の試料ではいずれも放射性核種は、検出されませんでした。

積算線量(TLD・蛍光ガラス線量計)分布図