東海村の原子力

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
原子力科学研究所

はじめに

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構は、原子力に関する我が国唯一の総合的研究開発機関として、原子力に係る研究開発を通して、人類社会の福祉と国民生活の水準向上に資することを目的としております。

原子力科学研究所(以下「研究所」という。)及びJ-PARCセンターにおいては、「安全が全てに優先する。」という基本理念のもとに、安全確保を最優先とし、情報公開に努め立地地域との共生を図りつつ事業を推進します。

そのうえで、原子力の基礎基盤研究、安全研究、人材育成等に取り組むとともに、東京電力福島第一原子力発電所(以下「福島原発」という。)の廃止措置に向けた研究開発を行っていきます。

また、研究炉及び核燃料物質使用施設については、原子力規制委員会が制定した新規制基準への対応を進め、研究炉(JRR-3及びNSRR)については、地元の御理解を得つつ運転再開を目指します。

さらに、施設中長期計画に基づき、「施設の集約化・重点化」、「施設の安全確保」及び「バックエンド対策」を計画的に進めます。

研究所における平成29年度の事業計画の主な内容は以下のとおりです。

 

1.事業計画概要

(1)安全確保の徹底

研究所及びJ-PARCセンターの事業の推進にあたって、安全確保を最重要課題として取り組むとともに、昨今の状況に鑑み核セキュリティの強化を推進します。

具体的には、法令及びルールの遵守を徹底するとともに、保安活動を確実に、かつ、より良い仕組みとするために、安全文化の醸成や核セキュリティ文化の醸成、品質保証活動の継続及び改善を進めます。特に、施設の安全管理については、高経年化対策等を踏まえて点検方法等を見直し、トラブルの予防に努めます。トラブルが発生した場合において、迅速・的確な対応ができるよう、平常時から危機管理体制の改善に努めるとともに、茨城県等との緊急被ばく医療に係る覚書に基づく地域医療機関や近隣の原子力事業者及び外部関係機関との連携についても、その重要性に鑑み、継続して取り組みます。

(2)福島原発の廃止措置等に向けた研究開発

国が定めた「東京電力㈱福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」の計画に基づき、福島原発の原子炉内の状態を把握するための解析技術の開発、溶け落ちた燃料(燃料デブリ)の特性把握、臨界管理技術や核物質量の管理技術の開発並びに汚染水処理で発生するゼオライト廃材及び放射性廃棄物の処理・処分技術開発等、研究所の各施設を活用した試験研究を行います。

また、廃炉国際共同研究センターでは国内外の大学、研究機関、産業界等の人材が交流できるネットワークを形成し、産学官による研究開発と人材育成を一体的に進める体制を構築して、福島原発の廃止措置に関する研究開発を推進します。

(3)原子力安全研究、核不拡散・核セキュリティに資する活動

多様な原子力施設の幅広い安全評価に必要な知見を整備するため、安全研究を実施し、原子力安全規制行政を技術的に支援します。具体的には、福島原発事故に対応して軽水炉におけるシビアアクシデント回避及び影響緩和並びに原子力防災に関する研究を進めるとともに、軽水炉機器の健全性評価、核燃料サイクル施設のシビアアクシデント評価、放射性廃棄物管理に係る研究等を実施します。

国際的な核不拡散体制の強化に貢献するための保障措置技術開発や核鑑識、核物質等の測定・検知技術等の核セキュリティ強化に必要な技術開発を進めます。また、国際的なCOE(中核的研究拠点)を目指すとともに、包括的核実験禁止条約(CTBT)監視施設の運用等の他、核燃料物質の輸送や研究炉燃料の需給等の支援業務を実施します。さらに、核不拡散・核セキュリティの重要性や機構の活動等について積極的に情報発信を行い、国内外の理解増進に努めます。

(4)原子力基礎・基盤研究等

原子力研究開発の基盤を形成し、新たな原子力利用技術の創出に貢献するため、原子力基礎工学研究を実施するとともに、軽水炉の安全性の更なる向上や福島原発の廃止措置と環境修復のための研究を進めます。具体的には、原子力施設の設計や廃止措置などに関わる手法の信頼性を高めるため、核データの測定・評価研究、原子力施設の核的・熱的な特性を計算するコードシステムの開発を進めます。また、廃棄物中に含まれる核燃料物質等を非破壊で測定する技術の開発を進めます。燃料・材料・化学分野では、原子力材料の経年劣化や、核燃料物質及び放射性核種について、様々な条件下でどのように変化するか、また、どれくらい存在するかなどを解析する手法の開発を進めます。環境科学分野では、環境中の放射性物質の動きを知るための技術を高度化するため、建物等の影響をより詳細に考慮して大気中への広がりや沈着を計算する手法を開発します。放射線科学分野では、様々な物質中での放射線のふるまいを計算するコードの改良を進めます。放射性廃棄物の減容化・有害度低減への貢献が期待できる加速器を用いた分離変換技術開発では、技術を実用化するための研究を推進します。

計算機を用いる計算科学技術研究では、耐震評価、過酷事故時の炉内複雑現象等のモデル開発のための基礎データの拡充とコンピュータシミュレーション技術の高度化を進めます。

先端的な基礎研究として、将来の原子力科学の萌芽となる未踏の研究分野の開拓を進めるため、アクチノイド先端基礎科学及び原子力先端材料科学の両分野で、先端的な研究を推進します。

(5)物質科学研究

大強度陽子加速器施設(J-PARC)や研究炉JRR-3等の中性子線利用施設・装置等の高度化に係わる技術開発を進めるとともに、中性子線等を利用した幅広い研究を行い、科学技術・学術分野における革新的成果を創出します。さらに産学官との共同研究により、それらの産業利用に向けた成果活用に取り組みます。

(6)J-PARCの整備・共用

高出力の定常運転実現に向け、リニアック、3GeVシンクロトロン及び50GeVシンクロトロンについて、粒子損失の低い運転方法の開発や機器の改良等を進めます。

物質・生命科学実験施設では、1MW出力の定常化に向けてターゲット容器の改良を進めるとともに、90%以上の稼働率達成を目指します。安定した陽子ビームによる8サイクルの中性子利用及びミュオン利用実験を実施します。また、ミュオンビームラインの整備を継続して進めます。

ハドロン実験施設では、安全強化された新たな環境で、質量の起源解明や、宇宙創生期の謎に迫る核力の理解を目指します。

ニュートリノ実験施設では、前年度に引き続きニュートリノをスーパーカミオカンデに向けて出射し、粒子-反粒子(CP)対象性の破れの検証実験等を進めます。

ユーザーに対する利用支援体制の更なる充実と利用促進を強化するため、試料の前処理や後処理を行う装置群の整備や、専用のデータ解析を行う計算機環境の整備を進めます。また、放射化したターゲット容器や電磁石を安全に管理するための放射化物使用棟(仮称)の整備を完了させます。

J-PARCセンター全体として、増大する外来利用者を含めた包括的な安全確保のため、マニュアルや規程類の見直し、遵守確認、安全講習等による安全文化醸成を継続的に進めます。

(7)原子力人材の育成

国内及びアジア諸国等を対象とした原子力人材育成研修事業を継続するとともに、東京大学専門職大学院への協力、茨城大学との包括協定に基づく協力、その他の大学院等における原子力教育への協力を推進します。

また、「原子力人材育成ネットワーク」の事務局として、我が国の原子力人材育成推進を継続します。

(8)大型研究施設の運転及び関連する技術開発

研究炉JRR-3及び原子炉安全性研究炉(NSRR)については、新規制基準への適合性審査に関する対応 を行い、早期の運転再開を目指します。特にNSRR については、地元の御理解を得つつ、平成29年度中の運転再開を目指します。

燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)の過渡臨界実験装置(TRACY)及び研究炉JRR-4については、廃止措置計画に沿って施設保守を進めます。

軽水臨界実験装置(TCA)については、廃止措置計画認可申請を行います。

高速炉臨界実験装置(FCA)については、安全確保を最優先に保守管理を行います。NUCEFの定常臨界実験装置(STACY)については、福島原発の炉心溶融で生じた燃料デブリの取り出し作業時における臨界管理に関する安全研究を行うため、更新改造に向けた施設整備を進めます。タンデム加速器、NUCEFのバックエンド研究施設(BECKY)、燃料試験施設(RFEF)、廃棄物安全試験施設(WASTEF)については、福島原発の環境修復や廃止措置に係る技術開発、原子炉燃料・材料の安全評価、核燃料サイクルや放射性廃棄物に関する安全研究、基礎・基盤研究等に資するため、安全・安定運転を行うとともに、利用技術の開発を進めます。

BECKYにおいては、STACY更新炉における臨界実験や破損燃料の性状把握等の技術開発に対応するため、現在、原子炉施設の許可区分である既存のグローブボックス等を含む一部の実験室について、原子炉施設から核燃料物質使用施設への許可区分の変更許可申請を行い、デブリ模擬体調整設備及び分析設備として継続利用します。

また、施設内で使用する液体状の核燃料物質の貯蔵設備を新たに設けるため、核燃料物質使用施設の変更許可申請を行います。

さらに、RFEFにおいては、セル内で使用した核燃料物質を貯蔵するため、核燃料物質の貯蔵施設の貯蔵能力の変更及び貯蔵設備を新たに設ける核燃料物質使用施設の変更許可申請を行います。

放射線管理計測技術の開発では、高線量下における迅速な線量測定手法等の開発を進めます。

(9)施設等の廃止措置、放射性廃棄物の処理・処分及び関連する技術開発

原子力施設の設置者及び放射性廃棄物の発生者としての責任において、安全確保を大前提に、所期の目的を達成した原子力施設の廃止措置及び低レベル放射性廃棄物の処理を適切に進めます。また、合理的な廃止措置や処理・処分に必要な技術開発を行います。

高減容処理施設においては、放射性廃棄物の前処理及び高圧圧縮処理による廃棄物の減容を進めます。

放射性廃棄物処理場については、新規制基準への適合性審査に関する対応を行い、早期の適合性確認を目指します。

さらに、日本アイソトープ協会から受託して保管している廃棄物について、平成25年度から開始した同協会への返却を継続します。

2.安全協定第5条に係る新増設等計画

(1)J-PARC(放射化物使用棟(仮称)の新設、ビームラインの新設及び変更等)

(概要)

物質・生命科学実験施設においては、放射化物使用棟(仮称)を竣工させ放射化物の保管を開始します。

年度途中での予算措置が可能となった場合には、物質・生命科学実験施設において、中性子ビームラインBL07の新設及びBL10の変更、ミュオンビームラインHラインの新設及びSラインの変更を行います。

また、ハドロン実験施設において、年度途中での予算措置が可能となった場合には、将来のビームライン増設に向けた遮蔽体構造の変更と追加、テストビームライン及び実験エリアの新設、High-pビームラインの新設、K1.1ビームラインの新設、KL実験エリアの遮蔽体変更を行います。

(2)STACY(定常臨界実験装置)施設(STACY施設の更新、STACY施設におけるTCA使用済燃料貯蔵設備の設置)

(概要)

STACYにおいて、1.(8)に示す技術開発を行うため、固体燃料を用いる熱中性子炉用臨界実験装置への更新に向けた施設整備を進めます。

また、TCAの使用済燃料(低濃縮ウラン、天然ウラン、MOX及びトリウムであり、いずれも核分裂生成物の蓄積が僅少で新燃料と同等の取扱い)を
受け入れて貯蔵するため、核燃料物質貯蔵設備の貯蔵能力を変更し、かつ、ウラン保管室に当該燃料を貯蔵するのに必要な使用済燃料貯蔵設備
(収納架台9台)を新設するため原子炉設置変更許可申請を行います。